近道と請求書:スペイン語に必要な語数
スペイン語は、日本語話者にとって発音の負担がもっとも軽い西洋語のひとつです。そのぶん、負荷は文法側にまとめて寄ります。どこに時間がかかるかが最初から見えている言語です。
母音が五つで、日本語と同じ数です
スペイン語の母音はア、エ、イ、オ、ウの五つだけで、位置によって変わりません。英語で苦労した「聞き分けられない母音」がほとんど出てきません。綴りと音の対応も規則的で、見たことのない単語でも書いてあるとおりに読めば通じます。
逆に、聞こえたとおりに書けばだいたい合っています。目で覚えた語がそのまま口から出る言語で、英語では起きないことです。単語を音として覚え直す工程が要りません。
ら行はそのまま使えますが、巻き舌は別です
スペイン語の単独の r は舌先を歯茎で一回弾く音で、日本語のら行とほぼ同じ動きです。多くの学習者が苦労するこの音を、日本語話者は最初から出せます。
問題は二つ重ねた rr です。pero は「しかし」、perro は「犬」。caro は「高い」、carro は「車」。日本語には巻き舌がないため二つが一つの音に潰れ、潰れた瞬間に別々だった語が記憶の中で一つになります。
子音が続くと母音を入れてしまいます
日本語は子音と母音が組になっているので、tres が「トレス」、plaza が「プラサ」になります。文字で覚えているあいだは表に出ませんが、話すと音節が増えて別の語に聞こえます。この癖さえ意識すれば、スペイン語の発音の学習はほぼ終わりです。
何語でスペイン語のどこまで分かるのか
言語学では語彙量をカバー率で測ります。ポール・ネイションの調査による数字です。
| 語族の数 | 話し言葉のカバー率 | できること |
|---|---|---|
| 1,000 | 85% | 身近な話題の簡単なやりとり |
| 3,000 | 95% | スペイン語字幕のドラマ、仕事の打ち合わせ |
| 6,000〜7,000 | 98% | 字幕なしの映画、ラジオ、四人が同時に話す場 |
95%と98%のあいだに三千語あります。95%では二、三文に一度知らない語に当たり、それがたいてい意味を担う語です。
日本語話者はスペイン語の何でつまずくのか
- 名詞の性。日本語にない範疇なので手がかりがありません。el libro、la mesa のように冠詞ごと記憶してください。-ción で終わる語は女性、-o で終わる語は多くが男性という規則が助けになります。
- 動詞の活用。人称ごとに語尾が変わり、時制も多いです。現在形、点過去、線過去の三つに絞るのが現実的です。
- ser と estar。どちらも「です」に当たりますが、es aburrido はつまらない人、está aburrido は退屈している人です。
ただし主語の省略は日本語と同じで、この点は楽です。動詞の語尾だけで誰の話か判断する必要はありますが、いちいち主語を言う習慣を作らずに済みます。
どの順で覚えるか
スペイン語の頻度曲線は急です。ser、estar、tener、hacer、decir、poder はどこにでも出ますが、辞書の項目の大半はほとんど姿を見せません。上位千語を先に固めるほうが、無作為の三千語より多くの理解を買えます。
段階の目安
- 500語:買い物、注文、道を尋ねる。
- 1,000語:相手がゆっくり話してくれれば会話になります。
- 3,000語:スペイン語字幕つきのドラマ、ニュース、仕事の打ち合わせ。
- 6,000語:字幕なしの映画、ラジオ、四人が同時に話す場。
読解と聴解の差が小さいのがスペイン語の特徴です。綴りと音が一致しているため、読んで増やした語彙がそのまま聞き取りに効きます。英語やフランス語では、この二つが別々に育ちます。
中南米向けかスペイン向けか
日本からスペイン語を使う場面は中南米の取引先が中心です。地域差は日常の名詞に集中していて、coche と carro、ordenador と computadora のように二百語ほど。効いてくるのは人称のほうで、スペインは vosotros、中南米は ustedes で統一します。
スペイン語は一日何語なら続くのか
一日十語なら四か月で千語、一年で三千語に届きます。三十語にすると二週間後に復習量が三倍になり、続かなくなります。詰まるのは覚える側ではなく忘れる側で、そこを引き受けるのが間隔反復です。